「天衣無縫」
ある言葉の意味が昔からそうだったのか、あるいは変わってしまったのか、わからなくなることがときどきあるが、今、僕が不安に思うのは、「天衣無縫」の意味である。これまでは「作為がなく、しかも完璧な」という意味だと思ってきた。特に詩などの作品に使うもので、天人の着物に縫い目がないところから生じた言葉だと、ぼくはそう思ってきた。
ところがこのほど、長嶋番という女性記者が亡くなったことをテレビが報道した折に、その人柄を「天衣無縫」と表現したのを耳にして、何かおかしなことになっていると感じ取った。このときは、前後の関係から、これは「天真爛漫」と言いたいのだと判断できたのだが、意味の違いを辞書で確認した。
ところが、ボクの期待を裏切って、そこには次のように書かれていた。
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てんい-むほう 二 【天衣無縫】
〔天女の衣には縫い目がないということから〕
(一)詩歌などにわざとらしさがなく自然に作られていて、
しかも美しいこと。
(二)性格が無邪気で飾り気がない・こと(さま)。
天真爛漫(てんしんらんまん)。
「―な人柄」
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(二)を見ると、「天真爛漫」と意味は同じである。だから、だれかの人柄を評して「あの人は天衣無縫だ」と言うことができるわけだ。
ボクはここにこそ驚いたが、同じように驚きを感じた人がいただろうか。長い間の勘違いだったのか、それとも言葉が意味を広げてしまったのか、そのどちらかである。辞書は「大辞林
第二版」である。
みなさんはどうお感じだろうか。
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