2. 「人間が作った音階」=平均律音階について


音程とは前の音との比率でしたから、どこから音階を始めてもすべての音が一定の比率を持ち,しかも純正調と大きくかけ離れず自然に聞こえる様にする必要があります。 さてここまで読んできて,一定の比率で並べるという言葉から,等比数列を連想した人は相当の数学の達人ですね。その通りです,等比数列を作ればよいのです。



1オクターブの間には,半音もいれて12の音(ド’をいれると13)があります。ドとド’の振動数の比率は1:2でしたから,一定の比率をrとすると



となります。すると、どの音から始めても同じ比率で音が並ぶことになりますので,どこから始めてもドレミファソラシドと聞こえるはずです。 ではこのrの値はいくつになるのでしょう。rの12乗がちょうど2になるような数ということです。つまりrは2の12乗根であればよいことになります。



この様にして作った音階を平均律音階といいます。いよいよこの音階を聞いてみましょう。



どうでしょうか,純正調の音階との違いがわかったでしょうか。平均律音階はほとんど聞き分けられないほど純正調の音階によく近似しています。 正確に聞くと,平均律のミ,ラ,シがほんのわずか高め,弦の長さで言うと短め,であることが分かるかもしれません。




この違いは和音にしたときに顕著になります。それは,和音ではほんの僅かな音程のずれがうなりとなって聞こえるからです。 純正調のドレミは完全に響き合いますが,平均律のドミソは濁ってしまい若干のうなりが生じます。 下のグラフは,純正調と平均律のそれぞれのドミソの和音を波形で表したものです。純正調においては 波の高さが一定ですが,平均律では不揃いです。この波の高さが音の大きさを表しますから,平均律では うなりが生じていることがわかります。







現在の音楽では,その便利さから平均律音階を中心に使いますが,曲の時代的背景を考慮して演奏するときや,響きの透明感が大切な場合などには純正調を用います。つまり 演奏の解釈によって使い分けているのです。


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