雲ができるまで

雲のでき方と雲からる雨

雲のでき方をわかるためには、大切なことがあります。みなさんがよく知っている「」の変化へんかです。

水は3つの状態じょうたいがある

水は温度によって3つの状態に変わる
図1 水の状態変化じょうたいへんか

水には、固体こたい(氷)、液体えきたい(水)、気体(水蒸気すいじょうきの3つの状態じょうたい(ありかた)があります。

それぞれの状態じょうたいからべつ状態じょうたい変化へんかするためには、「温度」重要じゅうようです。

図1は、それぞれの状態じょうたいの時に温度を上げたり下げたりしたときの水の変化へんかしめしています。「雲ができる」ことは、気体の「水蒸気すいじょうき」が液体えきたいの「水」に変化へんかしたり、液体えきたいの「水」が固体こたいの「氷」に変化へんかすることと同じです。

雲の正体は、この「水」や「氷」そのものです。雲は、気体の水蒸気すいじょうきをもとにしてできた、小さな液体えきたいの水や固体こたいの氷からできています。

どのように雲ができるのでしょうか。

空気中の水蒸気すいじょうきへん

湿った空気には、水蒸気の他に小さなほこりやちりも含んでいる
図2 空気の中にあるもの

空気には、川や海、地面から蒸発じょうはつした水蒸気すいじょうきがたくさんふくまれています。また、空気には、水蒸気すいじょうき以外いがいにも、非常ひじょうに小さなほこりやちりもふくまれています。

コップに冷たい水を入れると、コップの周りに細かい水滴がつく。これは空気中の水蒸気が冷たいコップに触れて小さな水滴に変化したもの。
図3 水蒸気すいじょうきから水にわる

この水蒸気すいじょうきや小さなほこりをふくんだ空気をやしてやると、先ほどの水の変化へんかと同じように、水蒸気すいじょうきは、水へ変化へんかし始めます。これは、つめたい水をいれたコップのまわりに水滴すいてきがびっしりとつくことと同じです。

冷たい空気は、暖かい空気より水蒸気を含むことができない
図4 空気の温度とふくまれる水蒸気すいじょうきわる

コップに水滴すいてきがつくことは、空気の温度によって、ふくむことができる水蒸気すいじょうきりょうちがうことに関係かんけいかんけいしています。

温度が高い空気はたくさんの水蒸気すいじょうきふくむことができます。ぎゃくに、温度がひくい空気は少しの水蒸気すいじょうきしかふくむことができません(図4)。

寒い日に息を吐くと白い煙のようなものがみえる
図5 空気がえると水蒸気すいじょうきは水にわる

寒い冬の日にはくいきが白く見えることも同じ仕組みで起きます(図5)。

人間のはくいきには水蒸気すいじょうきふくまれています。はくいきは体温と同じくらいの温度なので、たくさんの水蒸気すいじょうきふくんでいます。ところが、体から出て冬のつめたい空気にふれると水蒸気すいじょうきとして空気中にいられなくなり、細かな水滴すいてきとなるため、目で見ることができます。

つまり、水蒸気すいじょうきふくんだ空気をやしてやれば雲ができるということです。

空気をやす

雲は雲粒からできており、雲粒は、水蒸気が水滴に変化して凝結核の周りについたものである
図6 雲は雲つぷからできている

水蒸気すいじょうきふくんだ空気をやすと、ちりなどの空気中のゴミのまわりに、水滴すいてきがびっしりとついて、雲つぷができます。雲はこの雲つぷが集まってできています。

つぷは、非常ひじょうに小さな水滴すいてきなので、上昇気流じょうしょうきりゅうで空にかんでいることができます。また、雲つぷが弱い横風で流されることもあり、雲が動いているように見えます。

どうやって、空気をやすのでしょうか。

高い山に登る時のことを考えてみましょう。夏の暑い日でも高い山の上では、温度が下がってすずしく感じることがあります。これは、空の高いところへ行けばいくほど、気温(温度)が下がるためです。

気温は、100m上がるとやく0.6℃低下ていかします。このため、地上の気温が30℃のときに1000mの高さの山の頂上ちょうじょうは、温度が6℃下がって24℃しかないことになります。

つまり、水蒸気すいじょうきふくんだ空気を空の高いところに持ち上げると雲ができることになります。

空気を高いところに持ち上げるものは

上に向かって吹く風は上昇気流、下に向かって吹く風は下降気流
図7 上昇じょうしょう気流と下降かこう気流

空気を空の高いところに持ち上げるには、風の力が必要ひつようとなります。みなさんがよく感じる風は、横にいている風ですが、地球上には上や下に向かってく風もあります。これらの風をそれぞれ、上昇じょうしょう気流、下降かこう気流とんでいます。

そのうち、上昇じょうしょう気流は空気を高いところに持ち上げる風です。

どのようなときに、この上昇じょうしょう気流が発生するかを見てみましょう。

上昇じょうしょう気流が発生するところ

前線ぜんせん

寒気は暖気の下にもぐりこんで進み、暖気が持ち上げられるため上昇気流が発生する
図8 前線と上昇じょうしょう気流の関係かんけい

寒冷かんれい前線や温暖おんだん前線などの前線、すなわちつめたい空気とあたたかい空気がぶつかるところでは、だん気流(あたたかい空気)がかん気流(つめたい気流)にし上げられて上昇じょうしょう気流が発生します。あたたかい空気は、たくさんの水蒸気すいじょうきをもっているので、上昇じょうしょうすると雲を作ります。

みなさんがよく耳にする梅雨ばいう前線も、雲がたくさんできることにより、多くの雨をらせます。

低気圧ていきあつ

低気圧の中心付近に上昇気流がある
図9 低気圧ていきあつ上昇じょうしょう気流の関係かんけい

低気圧ていきあつの中心付近ふきんでは、上昇じょうしょう気流があります。この上昇じょうしょう気流により地上付近ふきん水蒸気すいじょうきを多くふくんだ空気が上空に持ち上げられて雲ができます。

低気圧ていきあつの近くでは、雲が多く、雨などがりやすいことになります。また、台風は、低気圧ていきあつが大きくなったものと同じためたくさんの雲を作ります。

強い日

図10 強い日差ひざしと上昇じょうしょう気流の関係かんけい

陸地りくちや山地が太陽の光で加熱かねつされて、地上付近ふきんの空気が上昇じょうしょうすることにより、部分てき低気圧ていきあつが発生します。このようにして発生した低気圧ていきあつ熱的低気圧ねつてきていきあつ(ヒート・ロウ Heat Low)とびます。この低気圧ていきあつ上昇じょうしょう気流がありますので、地上付近ふきん水蒸気すいじょうきをたくさんふくんだ空気が上空に持ち上げられて雲を作ります。

夏の晴れた暑い日では、湿しつ度の高い空気(=水蒸気すいじょうきをたくさんふくんだ空気)が、強い上昇じょうしょう気流により高く持ち上げられるため、大きな積乱雲せきらんうん(かみなり雲)になることがあります。

図11 山と上昇じょうしょう気流

平地でいている風が、山などに当たると、その斜面しゃめんけ上がります。このとき、平地の水蒸気すいじょうきをたくさんふくんだ空気を運ぶと、その空気は上空に持ち上げられ、雲を作ります。

いくつもの山がつらなった、山脈さんみゃく山岳さんがくなどでは、気温がひくいことと、その複雑ふくざつな地形により上昇じょうしょう気流や下降かこう気流がよく発生するため、空気中の水蒸気すいじょうきりょうにより、雲ができたり消えたりをひんぱんにり返します。このため、「山の天気はわりやすい」とよく言われます。

次に、こうやって作られた雲がどうやって雨をらせるかを見てみましょう。

上昇じょうしょう気流と雲つぶ関係かんけい

上昇気流により水蒸気を多く含んだ空気が供給され続けて、よりたくさんの雲粒ができる
図12 上昇じょうしょう気流があると雲つぶがたくさんできる

上昇じょうしょう気流がつづき、雲に水蒸気すいじょうきをたくさんふくんだ空気がどんどん流れむと、雲つぶがどんどんとえていきます(図12)。

また、雲も上昇じょうしょう気流により、より高い空へし上げられます。高い空へし上げられると、まわりの温度がひくくなるのでさらに雲つぶえていきます。

つぶから雨がるまで

雲の中で雲粒が衝突して水滴になる。さらに水滴は雲粒に衝突してより大きな水滴になる。やがて水滴の大きさが大きくなって重くなり、上昇気流によって浮かんでいられなくなって下に落下する。落下中も雲粒や水滴とぶつかりより大きな水滴になる。
図13 雲の中で雲つぶが大きくなる

やがて、雲の中の雲つぶ同士どうしが、ぶつかり合って、雲つぶよりちょっと大きい水滴すいてきになります。水滴すいてきは、さらに他の雲つぶとぶつかりあって、より大きい水滴すいてきになっていきます。

大きくなった、水滴すいてき上昇じょうしょ う気流ではかんでいられなくなり、下に落ちはじめます。落ちていく間にも、ほかの雲つぶや、同じようにできた水滴すいてきとぶつかりあってより大きな水滴すいてきになっていきます。

この大きくなった水滴すいてきが、雲をぬけだし、地上にってくるのが雨です。

また、冬などでまわりの温度がひくい場合には、水滴すいてきこおって雪となってってきます。

これまで見てきたように、雲ができるまでと、その雲から雨がるためには、空気中の水蒸気すいじょうきりょうと温度、上昇じょうしょう気流が重要じゅうようはたらきをしていることがわかります。

ぎゃくに高気あつ下降かこう気流)や空気中の水蒸気すいじょうきが少ないなどの条件じょうけんとなれば、雲はできにくく、天気も晴れとなります。

気象庁きしょうちょう気象台きしょうだいの天気予報よほうも、基本的きほんてきには、下にしめ条件じょうけんをもとに決めています。

  1. 水蒸気量すいじょうきりょう(地上付近ふきんから上空までの)
  2. 温度(地上付近ふきんから上空までの)
  3. 風(地上付近ふきんから上空までの方向や強さ)