「五十歩百歩」  


 コンビニの前に集まって野球の打率について話す人たちを見た。
「松井もイチローも、五十歩百歩だよ」
「そう、松井が五十歩、イチローは百歩ってこと」
 日本語はついにここまで来たか……。若い世代のために、ここでの間違いを指摘しておきたい。

 一.「五十歩百歩」は、良くないもの同士の間で、その本質に差のないことをいう言葉である。だから、日本で優れた成績を残し、海外で活躍する選手のことを言いたいときには、こんな言葉を使うのは当たらない。そういう場合は「甲乙つけがたい」と言えばよい。

 二.「五十歩百歩」というとき、「五十歩」は「百歩」より少しはマシである。これは戦場で逃げた歩数を言うわけだからだ。だから、仮に松井のことを悪く(低く)言いたかったら、松井の方を「百歩」にしなければおかしい。

 三.発音は「ゴジッポヒャッポ」であるべきだ。岐阜県人はそんな発音が身に付いていないが、共通語かどうかとか、そんな問題ではない。この意見は、簡単に共感を得られるところではないが、過去とのつながりを断ち切りたくなければ「ゴジッポ」と言ってほしい。

 

                 閉じる