「なびく」


 FMを聞いていたら、なんとかという曲が流れていた。歌詞に「風が君の髪をなびく」と入っていたのに気づいて、こりゃおかしいと思った。
 しかし、そういうのがラジオから聞こえてきてびっくりしない世代があるのでは、とひらめいて「なびく」をキーワードに検索を行うと、出るわ出るわ。
  • 地下鉄特有のなまあたたかい風が髪をなびく。
  • もう秋の風がお前の髪をなびく。
  • まるで君の髪をなびくそよ風に似た 僕の君への想いを
  • ロボット・ティマは本当に綺麗でした。髪をなびく時も
  • アスカの口調は優しかった。 風がアスカの髪をなびく。

 

 どうやら若い世代は、「なびく」を他動詞として使って
いるようだ。ボクたちはこれを、自動詞としてしか使ったことがないので、「髪が風になびく」は分かっても「風が髪をなびく」は理解しがたいのだ。
 ところで、上記のように、なびくものは「髪」にとどまってくれている。
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 いや、今ひらめいたのだが、若い人たちはこの言葉を。「梳(と)かす」という意味で使っているのではないだろうか。四番目の使用例は、どうも意味が違っている。自動詞とか他動詞とか言う問題ではなく、ここでは言葉の意味の伝統が崩れている。

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