「飛鳥」
今度は「飛鳥」について。この言葉もいったいどういうわけで「アスカ」なのかだ。天武天皇は、六七二年に即位している。十四年間は元号を定めなかったが、六八六年七月に初めて「朱鳥」と定め、その皇居も「飛鳥浄御原宮」と改称された。そもそもその所在地は「明日香(あすか)」と言ったのだが、ここに「飛ぶ鳥の」という枕詞が乗せられるようになったのだという。そんなことから、「飛鳥」と書いて「あすか」と読ませる表記が生まれたらしい。
それは納得できることだが、気になるのは、即位しても元号を定めなかった天皇が突然「朱鳥」なんて元号つけたり、自宅の名前を急に変えたりした理由だ。それまで「明日香」と言っていたのに、急に「飛鳥」とか呼んだりしたら、混乱するだろうに。
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世の中はなにか常なる明日香川
昨日の淵ぞ今日は瀬となる
よみひとしらず
昨日といひ今日とくらして明日香川
流れてはやき月日なりけり
春道列樹
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こちらは古今和歌集だが、歌枕としての飛鳥川も大変元気だ。「昨日」「今日」「明日香川」とやっている。馬鹿馬鹿しいことだが、こういうのが画期的で面白かった時代なのだから仕方がない。
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