「長谷」 


 さて、「初瀬(泊瀬)」は長い渓谷に挟まれた場所だという。「瀬」というのは川の流れの急なところのことを言うので、こんな名前がついた場所が長い谷に囲まれていることぐらいは想像がつく。 
 そういうわけで、歌で初瀬のことを詠むときには、枕詞として「長谷(ながたに)の」を使うようになったのだという。そのうち、「長谷」と書くと「はつせ」と連想がくるようになり、やがて「長谷」そのものを「はつせ」と読むようになったのだと。「つ」の字は時代とともに消えていったとか。つまり枕詞が地名を乗っ取ってしまったわけだ。
 なになに。ということは、そこに寺があろうがなかろうが、そんなこととは無関係に「初瀬」は「長谷」だったのか。そして、「はせでら」は、「はせ」にあるので「はせでら」と呼ばれるようになったのか。そもそもは「ちょうこくじ」である。ややこしい話。 
 書いていて疲れたが、読んでいてもきっと疲れることだろうと思う。

 

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