「ネギ」 


 ネギという字は「葱」と書くが、どうやら昔からこう書いてこう読んでいたわけではないらしい。古くは「葱」は、「き」と一文字で読んで、その「き」にもいろいろな種類があったらしい。夕べも素麺の汁に「わけぎ」が浮かんでいたが、これは「分葱」と書く。以下、辞書からの引用である。
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 あさつき 【浅葱/〈胡葱〉】
  ユリ科の多年草。高さ約三十センチメートル。葉は細い筒状。ネギ類に属し、各地の山野に自生するが、野菜として栽培され、葉や鱗茎を食用とする。せんぼんわけぎ。[季]春。

 わけぎ  【分葱】
  ユリ科の野菜。ネギの変種。中国を経て古く渡来。葉はネギより細く淡緑色で高さ約三十センチメートル。鱗茎(りんけい)は白色でほとんどふくらまない。和名は株分けで繁殖させることから。古名、冬葱(ふゆき)。[季]春。

 あきき  【秋葱】
  秋のネギ。二本の茎が並んで薄皮に包まれていることから、「ふたごもり」と続けて用いる。

 ねぎ   【葱】
  ユリ科の多年草。シベリア南西部原産といい、古く中国を経て日本に渡来。葉は中空の円筒形で緑色。基部は白く莢(さや)となって巻き合う。花茎の頂に「ねぎぼうず」といわれる白色小花を多数散状につける。主に関東では軟白化した白色部を、関西では軟白化せず緑色部を食用とする。ナガネギ。ネブカ。ヒトモジ。古名、き。[季]冬。
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 「浅葱色」が、「あさつき」の色だったことも分かったが、「ねぎ」の説明に「ネブカ」とあるのが目にとまった。そういえば子どものころ、母はネギのことを「ネブカ」と呼んでいた。根が深いからネブカなのだ。すると「ネギ」とは、「根」の部分の立派な「き」なのだろう。きっと正しくは、「根葱」と書くところなのだ。
 それはそうとして、ネギのどこを食べるかが地方によって決まっているとは知らなかった。しかし、うちは中部地方なので、白いところも緑のところも、どちらもいただきである。

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