「とおとうみ」
六年生の時、童話を書いた。琵琶湖を舞台に、鹿が魔法で救われるというもので、他愛のないものだったが、近江八幡という地名がそのとき気に入っていたのだ。「近江」とは、どうひっくり返っても、「おうみ」とは読めないので、読めることが自慢だったのか。しかし、こんなふうに読むことは「遠江」が「とおとうみ」であることに比べればまだかわいい。
ところで最近、この二つが関係していることに気がついた。「遠江」というのは、「とお・つ・あふみ」なのだ。「つ」は「沖つ白波」のように「の」の意味で使う。だから、「遠江」とは「遠くのあふみ」という意味。この反対に、近くにある「あふみ」を「近江」といったのだ。こちらは遠くにない、当たり前の「あふみ」なので、わざわざ「ちかつあふみ」とは言わない。なのに字面は「近い」と書いている。
で、「あふみ」とは何かというと、「淡い海」のことかと思う。万葉集にも「淡海」と書いてある。塩辛くない、淡水の海。なあんだ、琵琶湖のことじゃないか。遠江とは、浜名湖のことかな。昔は海につながっていなかったと高校入試のころに聞いたことがある気がする。
二十七年前の自分に救われた気分。だてに年は取らないのだ。
閉じる |