「はてしなく」


 朝の会や帰りの会で、一年生の教室から元気な歌声が聞こえてくる。思わずこちらも口ずさんでしまう。

 果てしなく 広がる空へ  
 飛び立とう どこまでも 遠く高く
 心の翼で  力の限り  
 輝く朝に  出会えるまで……

 歌いながら、「おや?」と思うのは、「果てなく」でいいのに、どうして「果てしなく」なのかということ。うっかり子どもたちに聞いたりすると、日本語を知らないと言われそうだ。大人のくせに。でも、なんだろう、「し」というのは。無意味に入ってくる言葉。
 考えていると、「おりしも」という言葉が浮かんだ。「折り」「し」「も」である。「ちょうどその時」という意味の言葉だ。言葉の意味を軽く強調しているのだ。
 そんなことを思っていたら、次々と似たような言葉が出てきた。

 「必ずしも」「今しも」「だれしも」「まだしも」
  「ころしも」「さしも」

 現代語から古語まで、ずるずると拾い出してみた。たった一文字なのだが、あなどれない「し」である。

 

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