「辺」


 「音読みと訓読みの違いが分からない」と相談を受けた。「音読みは意味がわかるほうで、訓読みは……」とか言っている。それは逆でしょ。
 で、相談というのは、『辺』の訓読みが分からないということだった。「音読みは『へん』で、訓読みは『あた・り』だよ」と言うと、「うそ、辞書には、訓は『べ』って書いてあった」とのこと。ふむふむ。確かにそのとおり。訓には「べ」もあったなあ。
 そう思ったとき、ふと「べ」という訓は、「へん」という音読みが変化して定着したものかもしれない、とひらめいた。日本に渡ってきたときの発音が漢字の「音」であるのならば、日本で使われるうちに日本独自の発音に変化して定着した、遅生まれの訓というのもあるかもしれない。

 

                 閉じる