イスラム教成立前夜である6世紀後半の西アジアでは、ビザンツ帝国とササン朝ペルシアとの抗争により、メソポタミア経由の従来のシルク=ロードが遮断され、代わってアラビア半島経由の交易路が活性化した。特に紅海沿岸のヒジャーズ地方のメッカなどの諸都市が繁栄し、貧富の格差増大や部族社会(相互扶助の伝統)の崩壊などの変化が生じ、宗教・社会改革の必要性が生じ、イスラム教成立の背景となった。メッカで預言者として活動を始めたムハンマドが、保守勢力の迫害を受けメディナへ移った西暦622年の事件をヒジュラ(聖遷)と呼び、イスラム暦の元年となっている。