【運動と体力】 |
(1)人間と運動
人間の日常生活は、体の動き、すなわち身体運動によって成り立っています。 身体運動は、まず、自分の生命を守るために必要です。古い時代から、人間は、食料となる動植物を確保するために、
狩猟・採取、あるいは牧畜・農耕に従事してきました。また、危険から身を守るために相手を攻撃したり、逃走するという身体運動も必要でした。 このような生命維持のために身体運動は、ほかの動物とも共通したもっとも基本的な運動です。一方、人間は、これからの生命維持のための行為に加えて、労働、遊び、スポーツなどのいろいろな身体運動を介して、 社会を構成する一員として必要な知性、意欲、感性などの資質を高めてきました。すなわち、人間は体を動かす事によって、 よりよく生きていく上で必要なさまざまな能力をつくりあげてきたのです。最近ではまた、生活の機械化の進行にともなう運動不足を補い、 精神的ストレスを発散させ、健康で幸福な生活を送るために運動は欠かせないないものとなっています。 (2)体力の考え方と必要性
自分の生命を守り、自己の資質を育てるための運動をおこなう身体の能力を体力といいます。私たちが、より健康で、より活力に満ちた生活をいとなむには、その基盤となる体力が必要です。 体力を高めることで、病気やけがを予防でき、病気やけがの状態におちいった場合でも、手術や治療に耐える力が増加し、 回復も早くなります。また、いろいろな仕事を余裕をもっておこなえるようになります。 さらにまた、各種のスポーツ活動、演劇や舞踊などの芸術活動など、さまざまな身体運動を楽しむことで生活を豊かにすることができます。 災害などの非常事態に際し、自分や周囲のためにすみやかに対応するのにも体力が必要でした。 現代社会では、強い力を発揮したり、長時間にわたって体を動かしたりする機会が少なく、 日常的に運動不足の状態におちいりやすいのです。そのために、私たちは、意図的に運動を実施していかないと、 体の機能が低下し、運動不足病や生活習慣病とよばれる病気にかかりやすくなります。 体力は、発育にともなって向上し、発育完了後の充実期をへて、年をとるにつれて低下します。 しかしながら、日常的に運動をおこなうことによって、体力の低下を少なくすることができます。 心身ともに健康な生活を送るために、とくに高校生である私たちの時期には、意識してスポーツのような活発な運動に参加し、 体力水準をより高いものにするとともに、生涯にわたって運動を習慣化する基盤をつくる必要があります。 |