【トレーニングの意義と目的】

(1)トレーニングの意義
 トレーニングとは、運動や環境に対する体の適応性を利用し、体の機能をできるだけ高度に 発達させる行為をいいます。
 運動をはじめると体の器官や組織は、運動の内容に応じた働きを示します。 たとえば、運動中の心拍数や呼吸数は、安静にしているときよりも高いことがわかります。 これは、運動をしているときのほうが多くの酸素を消費するためであり、その必要量を満たそうと、 呼吸・循環器系の働きが高まるためです。また、重い荷物を持ち上げようとして、強い力をだそうとすれば、 神経から刺激が筋肉に送られるため、多くの筋繊維が活動し、筋肉がより大きな力をだせるようになるのです。
 このような器官・組織の活動の高まりは、体を動かすことをやめればもとの状態に戻ります。
ところが、それを規則的、周期的にくり返していると、時がたつにつれて、体の器官や組織はより高い機能をもつようになります。 このように、新しい状態に対応できるように、体の機能が変化することを適応といいます。運動によって、 体の適応を効果的に引きだす意図的な行為がトレーニングであり、体に生じる機能的および形態的変化がトレーニング効果です。

(2)トレーニングの目的
 体力トレーニングには、健康を保持増進させる目的でおこなわれるものと、 スポーツにおける競技力を向上させる目的でおこなわれるものとがあります。
1.健康を保持増進するトレーニング
 適度な身体活動を規則的に実施すると、体の機能が正常に保たれ、健康の保持増進にも役立ちます。 陸上競技、バレーボール、テニスなどのスポーツを定期的に実施したり、トレーニング器具を使って 積極的に運動することは、健康な体の育成に有効です。また、ジョギング、歩行、なわとび、体操などの軽い運動であっても、 それらを日常生活で習慣的におこなうと、健康が保持増進されます。

2.競技力を高めるトレーニング
 競技力を高めるトレーニングでは、競技者として必要な基礎的体力に加えて、 専門とするスポーツ種目の競技力と関連の深い体力を強化することが必要です。 たとえば、長距離走のように、競技時間が比較的長い種目では、呼吸・循環器系の働きを高める持久力のトレーニングが大切です。 また、砲丸投げや柔道のように、瞬発力やすばやい動きが競技成績を左右する種目の選手にとっては、 筋力や瞬発力のトレーニングが、競技力を高めるために重要です。