河川の上流域は隆起地域のため浸食によるV字谷や渓流が連続し,水田や集落の分布する河成低地は発達していないのが普通です。しかし長良川の上流では,隆起運動が小さいためV字谷などの地形は一部に限られ,谷底堆積低地と言われる平坦な土地が細長く連続的に分布しています。このことが長良川の大きな特徴になっています。
このような地形になったのにはいくつかの地質的な理由があります。一つにはこの地域は古くから(約170万年より古い時代から)隆起の量が少なかったこと。二つめには長良川の西側の山地斜面に沿って八幡断層とよばれる活断層が延びており,この断層の東側が沈降する地域になり,長良川の流れ道が沈み込み上流から運ばれた土砂が堆積したこと。三つめに白鳥町より上流では土地の隆起量がやや大きく,古い火山岩類が分布しているため,大量の土砂が下流に流れ出したこと。さらにはこの地域が比較的軟らかい地質で出来ており,川幅が広くなりやすかったことなどが挙げられます。
長良川が本流にダムのない川の代表になっているのは,こうした上流に峡谷が少なく,谷底平野が連続するという特徴を持つためと言えるでしょう。
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