海がないの岐阜県で全国的に有名な魚がサツキマスとアユといえます。なかでもアユは全国的に分布しているのに岐阜県が有名なのは,棲息できる水のきれいな大きな河川を持っているからといえます。なかでも長良川は岐阜市や関市で行われる伝統的な鵜飼に代表されるようにアユの川としてその名を知られています。
 5月,長良川では稚鮎が遡上していく姿を観察できます。琵琶湖産,養殖産稚魚の放流,天然魚も含めて川を遡上しながら成長して,やがて川底の石に付着した藻類を鋭い歯で削って食べるようになってきます。その跡は,竹の葉を2枚並べたような形をしていて,「はみあと」と言います。この形態を持ち始めると藻類が付着した好適な場所を選んで縄張りを持ちます。強い鮎ほど川の中央に位置して,およそ1平方メートルのなわばりを持ち,この中の入ってくる他の鮎を体当たりして追い出す習性を持ちます。
 この習性を利用してアユを釣る「アユの友釣り」が夏になると各地で見られます。
 夏が過ぎ,秋になると産卵のために川を下ります。特に雨が降って大水になると一気に川を下っていきます。この時期になると長良川の各所では,川を下るアユを捕るヤナ漁や瀬張り網漁と呼ばれる落ちアユ漁が行われます。
 アユの産卵は,水がサラサラ流れる小石が多い瀬の底で,長良川では長良橋から合渡橋付近が中心です。ここでは産卵期の9月頃にはアユが群れをつくり,石の表面に卵を付着させます。卵は12日から13日でふ化して4〜6mmぐらいの稚アユになります。その後1〜2日かかって海に下り,海で3〜4ケ月過ごして,海水と河口の水温が同じくらい(13〜18℃)になると川を上り始めます。このころには7〜8cmになりプランクトンや小さな動物を食べながら成長し上流へと遡上していきます。
 長良川を代表する魚であるアユが,県庁所在地である岐阜市で産卵するということを見てもいかに長良川の流れがきれいに保たれて来たかが分かります。

このウィンドウを閉じます