3.自然界と黄金比について


フィボナッチ数列の生成規則は,ウサギのつがいの増加や細胞の増加の様子をうまく模倣しているように,自然界に潜むある規則を表しているように見えます。 また黄金比の性質は,美しいだけでなく,長方形の中にぴったり収まるという意味で形の上での最適な状況を表しています。これらが自然界の様々な ものの中に頻繁に見つけることができます。

ここではそのいくつかを展示します。お楽しみ下さい。

フィボナッチ数列は,草木の枝分かれの仕組みを上手く表現できます。木は,幹がある程度太くなると枝を出します。その枝もある程度太くなるとさらに枝を出します。



この様に,枝の本数にもフィボナッチ数列が現れます。

枝分かれについては,黄金比も関連しています。それは,幹の周りのどの方向に枝を出すかに関係しています。

木は自分の枝の葉が,上からの太陽光線を最大限に受けられるように,最適に枝を出す傾向にあります。 最初に出した枝から,ある一定の角度で次の枝を出すとすると,どんな角度がよいでしょうか。 それは,1周360°を黄金比に分けた角,すなわち黄金角ごとに枝をだすのが,最適であることが知られています。



下図は,木の幹を上から見たとき枝と葉が黄金角ごとに生える様子を示しています。葉が多く茂っても,重なり合う 部分が少ないことに注目して下さい。



下図は,1周を3/7の比率で枝が生えていく場合をシミュレーションしています。有理数の比率の場合,何回か回ると, 重なり合ってしまい,下の葉が太陽光の陰になってしまうことを表しています。
この場合、8番目の枝が最初の枝と重なってしまいます。



次に,黄金角の位置で生えた芽が成長して次第に大きくなり,外側に拡がっていく様子を見てみましょう。 下の図は,木の幹を上から見たとき,外側が古い芽,内側へ行くほど新しい芽と考えて下さい。黄金角で 生えた芽は,少しずつずれながら,螺旋模様を作ることが分かります。このとき,逆向きにねじれた螺旋も微かに見えることに 注意して下さい。




この様な植物の成長の規則が顕著に現れる実例は,ひまわり,バラなどの花の模様や松つかさの模様でしょう。





自然界の生物における現象は,その環境や進化の過程により,多種多様ですから,すべてがこの規則や性質を持つのではなく,例外はたくさんあります。 しかしその奥に潜むルールは,共通しているのではないでしょうか。

次に,螺旋模様についての例をいくつか見ていきましょう。

まず黄金比を持つ長方形と螺旋の関係を調べてみましょう。黄金比を持つ長方形の性質は,正方形を次第に小さくしながら加えていったときに充填される 長方形でしたので,その正方形を内側に巻き込むように配置すると,正方形が綺麗な螺旋状に並びます。




この螺旋模様を見ていると、巻き貝を連想するのではないでしょうか。ここに,巻き貝の中でも一際美しいオーム貝を展示します。



この螺旋は対数螺旋と呼ばれていて、数学的にも美しい性質を持つ螺旋です。



この螺旋と黄金比を持つ長方形の関係をもう少し深く見ていきましょう。

下図のように、巻き込みの点を中心に長方形を縮小しながら回転すると、常にその中に対数螺旋を内包しています。




言い換えると、黄金比に内接する対数螺旋はどこで切ってもそれに外接する黄金比を持つ長方形が存在します。ですから、対数螺旋はどこで切ってもすべて相似な曲線ということになります。 この性質は生物の形を考える上で、大変重要な意味を持ちます。生物の成長、あるいは生物の一部分の成長(爪、髪、角、甲羅など)の様子を見ていると、 少し伸びても全体としての形が変わらない様に、常に相似形を保ちながら伸びていくわけです。その伸びた部分が空間を隙間なく充填するとき、ここで見てきた様に 黄金比の長方形と対数螺旋が浮かび上がってくるのです。


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