3 大きな数・小さな数は何と呼べばいいのでしょうか


日常,桁数の大きな数は3桁ごとでコンマをうって読むのが習慣です。

例えば日本の国家予算は 100000000000000 円であると書くよりも,100,000,000,000,000 円と書けば,100兆円であることがすぐ分かり,読みやすくなります。それは4つ目のコンマが1兆の位ですから, その位に100があることが一目瞭然だからです。しかしこの区切りは,日本語の位取りの表現としては不便なやり方です。 例えば,1,000,000 は100万ですので,「1何とか」ではありません。日本語の表現に合わせると,100,0000 のように 4桁ごとに区切るべきですが,欧米の習慣に合わせて(?),3桁区切りを使用しています。兆の位の12は3と4の最小公倍数ですから, 日本語でもたまたま兆の位だけは読み易くなるのです。


日本語の位取りの名前は,1627年吉田光由がまとめた「塵劫記」(1641年改訂版)に表されているように, 下の表のような名前が使われています。米語の呼び名や国際単位系による接頭辞と比較してみましょう。



このように,日本語では4桁ごと,米語では3桁ごとに名前が付いていることがわかります。  ところで日本語の呼び名は面白い。不可思議とか無量大数というのは味のある名前ですね。人の名前で那由太(那由他から)というのもあるようですが, きっと数学の先生のご子息でしょう。小さい数の呼び名も風情があっていいですね。

自然科学の世界では国際単位の呼び名がしばしば登場します。コンピュータの世界でも,ハードディスクの容量は初期の段階では数百KB(kilo byte)から始まり, 最近では数百MB(mega byte)から数GB(giga byte)になってきています。やがて数TB(tera byte)となるのも 時間の問題でしょう。このように,国際単位の呼び名も日常の中でよく使われるようになりました。

この国際単位系の kilo,mega,tera はギリシャ語の"chilioi(千の)","megas(大きい)", "gigas(巨大な)","teras(怪物)"から由来しています。英米語の million や billion などもギリシャ語や ラテン語から由来したものです。古代ローマでは,数を表す最大の語は千(mille)であり,それは ローマ歩兵軍団が千歩歩く距離を長さを表していたそうです。これがマイル(mile)の語源ですが, 歴史が進むに連れてさらに大きな数(千の千倍である百万)が必要となり,並はずれたという意味の接尾辞(ione)を つけて,millione を作ったといわれています。これが広まって million となったわけです。いわば特大の千という意味ですね。 いずれにしてもこれら数詞はその国の歴史や文化に深く根ざしているわけですから,国際化による呼称の統一は大変困難な 問題でしょう。


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