4.乱数の効用(モンテカルロ法による円周率の計算)


 情報化社会の進展に伴って、乱数は馴染み深いものになってきました。
乱数は自然科学や社会科学の研究において、確率的に変動する現象を解析する場合に積極的に利用されることは、「3.『デタラメ』をつくる」で述べました。その方法は、コンピュータで乱数を大量に発生させて、その乱数と反復計算を用いて、数値実験によって問題の近似解を求める数学的手法を使います。これをモンテカルロ法といいます。この名前は、手法が一見運まかせのゲームに似ていることから、カジノで有名なモンテカルロの地名をとって名付けられました。

ここでは、モンテカルロ法による数学上の興味深い話題を提供しましょう。 それは「モンテカルロ法による円周率の計算」です。

これの方法を楽しむために、面積と確率の関係を確認しておきましょう。
それは、

紙の上に「デタラメ」に点を打つとき、その点が、紙の上に描かれた図形の中に入る確率は、その図形の面積に比例する。

ということです。
このことは、例えば、雨が降っているとき、地面に落ちる雨粒の数を数える場合を想像してください。「雨粒の数は、広い領域では多く、狭い領域では少ない」ということは容易に理解できるでしょう。領域の面積が2倍になれば、雨粒の数も確率的に(無限の時間をかければ究極的に)2倍になるということです。勿論この場合、雨はデタラメな場所に降ってくることが前提です。

さて、いよいよ円周率を求めに取りかかりましょう。
ここに、一辺が2の正方形と、半径が1の円を用意します。それぞれの面積は4とπですね。

この正方形と円を重ねて、この上に「雨を降らせる」と、

  正方形の中に落ちる雨粒の数:円の中に落ちる雨粒の数≒4:π(十分に時間をかければ近似が良くなっていく)

という関係が成り立ち、
従って、

  π≒4×(円の中に落ちる雨粒の数)/(正方形の中に落ちる雨粒の数)

となります。そして、この近似は時間が経てば経つほど良くなっていくことが期待されます。

以上のような仕組みでπの近似値が求められます。
雨を降らせるように、デタラメに点を打つにはどうしたらよいでしょうか。勿論ここではコンピュータ上で乱数を発生させて計算するわけですが、簡単な工作で図形を作り、人力で石を投げたり、豆をばらまいたりやってみるのも一興です。

モンテカルロ法による円周率の計算(シミュレータ)


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