5.物体の運動と2次曲線


ボールを投げると,放物線を描いて飛んでいくことはよく知られています。
放物線という言葉はこのことから由来しています。放物線は2次曲線の一つであることはすでにみてきました。ボール投げのシミュレーションで遊んでみましょう。

ボールの軌道 シミュレーション

このシミュレーションはボールの軌道が放物線であることを前提に作ってあります。確かにこれは日常で体験する放物運動を上手く模倣してはいますが,本当にそうなるかどうかは検証しなければなりません。検証しなければならない問題は

などです。これは皆さんの今後の勉強に委ねます。

さて,機械を使ってボールをどんどん遠くへ投げると,そのうち地球を回る人工衛星のようになるのでしょうか。ボールは放物線を描くはずなのに変ですね。

実は地上でボールが放物線を描くのは,ボールに働く力(引力)が、いつも下向きで、一定である、という条件が隠されているからです。地上の人間の感覚では,地上は平らで引力はいつも下向きと考えれば十分ですね。

このような考えが通用するのは地球が平らだと思える範囲内であり、かつ、引力が一定であるとみなせる範囲内だけです。下図のような状況ではこの考えは当てはまりません。

では,どう考えればよいでしょうか。

実際の地球は丸く,引力はその中心に向かって作用します(これも地球を点と考えたときのことですが)し、引力も距離の2乗に反比例することはご存じでしょう。このときボールの軌道は楕円になります。

人工衛星のように地球の周回軌道を回るようにするには,ただ単に大きな初速度でボールを投げるように発射すればよいのではなく,上空の適当な場所で,適当な方向に再度噴射しなおさなければならないのは,言うまでもありません。

さて最後に,人工衛星のように地球の周りを回る物体の動きを見てみましょう。

人工衛星の軌道 シミュレーション

彗星は何十年何百年といった周期で太陽を焦点にして回っています。それらは楕円軌道ですが,円に近いものや細長いものなどさまざまです。中には太陽系外から放物線軌道や双曲線軌道を描いてやってくるものもあるかもしれません。しかしそれらは二度と戻ってきませんし,特に放物線軌道になるには余程条件(e=1)が整わなければなりません。ほとんど不可能ですね。


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