4.歪んだ鏡の世界


鏡の表面は平らな平面ですから、左右が(数学的な表現では前後が)反対になった鏡像ができました。
しかし、鏡の表面が曲面になっていたら、どのような鏡像ができるでしょうか。
ここでは、そのいくつかを観ていきましょう。

凹円柱面

凸円柱面

凹球面

凸球面

凹円錐面

凸円錐面

様々に歪んだ鏡像が楽しめますね。
これらの曲面はもとの図形を歪めてしまいますが、場合によっては歪んだ図形を見やすくする効果もあります。
例えば、正距方位図法で描かれた世界地図は、経線が放射状になり、かなり歪んだ地図です。これを円柱状の鏡で見ると、見慣れた地図に近づきそうです。


正距方位図法を凸円柱面で観る

(動画)


鏡と物体の位置関係によっても鏡像は変化します。その例として、凹球面による鏡像と物体の位置を調べてみましょう。物体を凹球面へ近づけていくと、それにつれて鏡像もかなり変化します。


凹球面と物体の位置関係

(動画)

このように、凹球面においては、物体が球の中心を過ぎるとき、拡大や縮小など複雑に変形されながら、倒立像から正立像に変わります。

さて次に、凹球面による究極の鏡像を味わってみましょう。
半凹球面ではなく完全な球面を作り、その内面を鏡にします。この球面の内部に入ったら、どのような世界が見えるのでしょうか。
このような実験は現実の道具ではなかなか実現しにくいものですが、「コンピュータによるシミュレーションやCGならでは」の世界です。その醍醐味を楽しんでください。


球面内部の世界

(動画)

球面内では、反射した光線が、何度も再反射しながら球面内をぐるぐる回るので、その鏡像がたくさんできます。ある場合には同心円上の鏡像ができたり、ある場合には一列に並んだような鏡像ができたりします。 球面による反射の詳しい仕組みは、この「数学鑑賞館 2次曲線のいろいろ」の中にある「2.2次曲線と光」をご覧ください。


曲面を持つ鏡として最も有用で親しまれているものは、放物面を持つ鏡でしょう。
放物面とは、放物線(2次関数)をその軸の回りに回転してできた曲面のことです。この曲面の大切な性質は、軸に平行に入った光線が1点(焦点)に集まるということです。

この性質をうまく使った道具は、

などがあり、身近なところに応用されています。


放物面鏡の近くに置いた物体

(動画)


放物面鏡の軸上の視点

(動画)


放物面鏡から遠方に置いた物体

(動画)


次に、鏡の最後の話題として、「前後左右を同時に逆にする鏡」という奇妙な鏡をご覧いただきます。

この鏡は、直交する平面の窪みを持っています。
この鏡に物体を映すと、右の面の鏡で映った像は(その面の垂直方向に対し)前後逆になり、その像が左の面の鏡でもう一度(その面の垂直方向に対し)前後逆なります。 左の面の像も同じように2回前後逆になります。

以上、「鏡のいろいろ」はいかがでしたか。


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