3.和音の流れについて 


異なる高さの音が複数個同時に鳴ると,響き合ったり合わなかったりしますが,異なる高さの音を上手く選ぶことによって,その響きに ある雰囲気を持たせることができます。この様に,意図的に選ばれた複数の音を同時に響かせて合成した音を和音と言います。ここでは 基本的な和音を,三角関数の波形とともに,その響きを展示します。ここに展示する和音はすべて純正調で作られていますので, その響きの透明感に注目してください。真の純正調の和音を聞く機会は比較的少ないと思いますから,ぜひ体験してみてください。

たとえば,ドミソの和音は主音(ド)の性格を強く持っていて,主格感や安定感を示します。



また,シレソ(ソシレの第一転回形)の和音は,ドミソの和音へ進もうとする強い性格を持っています。



ですから,ドミソ,シレソ,ドミソと並ぶと,思わずおじぎをしたくなりますね。

ドファラ(ファラドの第一転回形)の和音を聞いてみましょう。この和音は,特に強い主張はありませんが,何となく叙情感や開放感などを感じますが, その前後関係で性格付けがきまるようです。



ここでドミソ,ファラド,シレソ,ドミソを並べてみましょう。

これでひとつの流れができましたね。この流れを聞いていると, 出発,開放(あるいは展開),回帰,安心と言うような言葉で表現できる状況ではないでしょうか。これが音楽の流れの最も単純な 形(和音進行)です。この和音進行はでたらめに作れるのではなく,感覚的な自然な流れを大切にした,いわば「和音進行の約束事」 に従って,進行していきます。

この和音進行が様々に変化すると,その音楽の様々なドラマ性ができ上がり,私たちをいろいろな世界へ誘ってくれます。 音楽におけるメロディは,その音楽の進行係のような役割を果たしていますが,このメロディと和音進行とは密接に結びつて います。音楽の作曲においては,メロディと和音進行の約束とが火花を散らしながら,作曲が進められます。 つまり,作曲者が頭に浮かんだメロディの流れが,和音進行の約束事を踏襲することもあり,また違反することも 起こってきます。違反するような場合は音楽の流れがある緊張感を持ち,通常とは違った流れを作り出していきます。 これが音楽の流れの妙味というものでしょうか。

ここに,いろいろなジャンルの音楽で使われる人気のある和音の流れのひとつを展示しましょう。この流れは,聞く人を落ち着かせ,ゆっくりとした口調で語り, しみじみと感じさせ,共感を呼び起こす,という雰囲気を持っています。どんな曲に使われているか創造しながら,ごゆっくりご鑑賞ください。


では最後に,純正調によるメロディを聞いてみましょう。平均律とはひと味違う(?)音の跳躍をお楽しみください。 曲は,バッハ作曲「アンナ・マグラレーナ・バッハのための音楽ノート」より,メヌエットの一節です。




メニューに戻る