「くるす桜」は古今伝授の祖・東常縁の物語です。八幡町村瀬家に、宝暦9年(1759)に筆写された「久留春桜」が残されており、ほかにも天理図書館などに書写本がありました。これに注目し、能楽師味方健氏に能として復曲を依頼しました。
大和町商工会青年部が、町興しの能としてこれを取上げ、全町的な取り組みに発展して実行委員会が組織されました。昭和63年8月7日、初上演が為されました。以後、実行委員会は有志に移りましたが、毎年8月7日、明建神社の例祭「七日祭」の夜の催しとして定着し、回を重ねています。
この能の魅力は、第一に会場の良さです。―大木が繁る荘厳な神社の境内で行われ、拝殿がそのまま能舞台になる。ヒグラシの蝉時雨や滑空するムササビが自然の演出をする。さらに現地の物語りを現地でしている臨場感。バザーも出店され、地の食を味わいながら観能する―ここに専門家は能の原点のような懐かしさを感じています。
薪能くるす桜は、古今伝授の里・大和町のシンボル的催しとなり、多くのお客さまを魅了し続けています。