天体写真の中で太陽だけは特別です。他の対象は暗いために時間をかけて撮影しなければならないのですが、太陽の場合はどれだけ短いシャッターをきるか、あるいはどれだけ光を弱めるかが重要になります。なにせ小さな虫めがねでも紙を燃やすことができるのですから、そのままカメラを太陽に向けるとカメラが傷んでしまうので十分な注意が必要です。そこでフィルターと呼ばれる特殊なガラスを使って光を弱めて撮影します。科学館では、望遠鏡の対物レンズの前にインコネルフィルターという太陽の光をほとんど反射してしまう鏡のようなガラスを取り付け、この望遠鏡を通して撮影しています。一般的なのは、厚紙やキャップで望遠鏡の口径をしぼり、D4とかND400、G530などのフィルターを対物レンズの前や望遠鏡とカメラの間に付けて光を弱める方法です。フィルムは低感度のもので、白黒ならミニコピーなどを、カラーならISO100までのものを使います。露出時間はフィルターによって違ってきますが、測光のできるカメラならメーターの指示通りでいいでしょう。 全体像
太陽の全体像は望遠鏡の直焦点方式で撮影します。この方式では、太陽はフィルム上に焦点距離のおよそ100分の1の大きさで写すことができます。つまり、焦点距離が500mmの望遠鏡ではフィルムには5mmの太陽が写せるのです。普通に使われている35mmフィルムは縦の長さが24mmなので、フィルムいっぱいに写すには焦点距離が2000mm程度がいいことがわかります。カメラ用のコンバージョンレンズを使うことによって手軽に焦点距離を引き伸ばすことができます。
白い太陽投影板に太陽像を投影して、それをスナップ写真のように撮影するという簡単な方法もあります。
拡大撮影
太陽の表面には黒点や白斑、粒状斑などの模様が見られ、これをくわしく撮影するには直焦点方式よりも倍率が上げられるリレーレンズ方式を使います。倍率が上がる分だけ像が暗くなるため、露出時間も長くなります。
黒点はさまざまな形をしており、場所も形も毎日変化していて写真で追うとおもしろいでしょう。また、黒点の数は11年を周期に増減していますから、撮影を続けると貴重な研究ができます。 |