天の川の中で翼を広げ南に首をのばして夜空を飛ぶ姿、それがはくちょう座です。神話では、この白鳥は大神ゼウスがスパルタの王妃レダのもとへ通ったときに身を変えた姿とされています。 はくちょう座の1等星デネブは、アラビア語で「尾」の意味があり、文字どおり白鳥の尾の位置で輝いています。くちばしにあたる星はアルビレオといい、目では1つの星にしか見えませんが、実際はオレンジ色の3等星と青色の5等星がごく近くに並んで輝く美しい二重星です。 はくちょう座は、大きな十文字形を描くように星が並んでいるので、南十字星に対し北十字とも呼ばれています。ちょうどクリスマスのころ、西の地平線にそそり立って輝くようすは、さながら十字架でも見ているようです。
X−1の位置
白鳥という名に反して、はくちょう座には暗黒の天体ブラックホールのもっとも有力な候補があります。「はくちょう座X−1」と呼ばれる強いエックス線天体がそれです。この天体は、η星の近くにありますが、もちろん目でみることはできません。 太陽より重さが数倍以上ある天体は、輝きを終えた後、自分自身の重力によって限りなく小さく縮んでいきます。大量の物質が小さな1点に押し縮められた結果、その天体は巨大な重力を持つことになり、どんなに速く動く物体も表面から逃げ出すことができなくなります。秒速30万kmの光でさえ脱出できないので、ブラックホールは外から見ることができません。光が地球まで届かなければ、私たちに「見えた。」と感じることができないからです。その上、近づいた物体はすべてを吸い込まれてしまうのでブラックホール(黒い穴)という名前がつけられました。