【5】消費者を守る法律のしくみ

契約トラブル解決の考え方 ~法律をどう使う?~

契約トラブル解決・図説

【1】特定商取引法

 勧誘方法に不意打ち性があるなど、トラブルが生じやすい7つの取引形態(特定商取引)について、様々な規制をかけることで、消費者に損害が生じることを防止し、利益を保護するための法律です。

公正な取引・消費者の損害防止

 この法律では、取引の種類によって、再勧誘の禁止、契約書面の交付義務、申込みの撤回又は契約解除(クーリング・オフ)等のルールが定められています。

特定商取引法に
定める取引の種類
勧誘方法・契約内容 主なルール
書面
交付義務
クーリング・
オフ(期間)
クーリング・
オフ期間経過後
の中途解約
訪問販売 自宅などへの訪問
キャッチセールス(営業所以外の場所から誘い、来訪させる)、
アポイントメントセールス(販売目的を隠して誘う)

(8日間)


※1

通信販売 テレビ、雑誌、カタログ、インターネットなどの広告を見て、
郵便、電話、インターネット等で申込みを受ける
確認画面
の表示

※2
電話勧誘販売 電話で勧誘し、申込みを受ける
(電話を切った後の郵便・電話等による申込みを含む)

(8日間)
連鎖販売取引
(マルチ商法)
個人を販売員として勧誘し、さらに次の販売員を勧誘させるというかたちで、
販売組織を連鎖的に拡大させながら商品やサービスを販売する

(20日間)
特定継続的役務
提供(7つの役務)
エステティック、美容医療、語学教室、家庭教師、学習塾、パソコン教室、結婚相手紹介サービス(エステは1か月、その他は2カ月を超える期間5万円を超える金額の契約)
(8日間)
業務提供誘引
販売取引
仕事を紹介するので収入が得られると勧誘し、仕事に必要だからといって
商品やサービスを購入させる

(20日間)
訪問購入 自宅などを訪問して貴金属等物品を購入(買取)する
(8日間)
訪問販売
自宅などへの訪問、キャッチセールス(営業所以外の場所から誘い、来訪させる)、アポイントメントセールス(販売目的を隠して誘う)
書面交付義務…○
クーリング・オフ(期間)…○(8日間)
クーリング・オフ期間経過後の中途解約…※1
通信販売
テレビ、雑誌、カタログ、インターネットなどの広告を見て、郵便、電話、インターネット等で申込みを受ける
書面交付義務…確認画面の表示
クーリング・オフ(期間)…ー※2
クーリング・オフ期間経過後の中途解約…なし
電話勧誘販売
電話で勧誘し、申込みを受ける(電話を切った後の郵便・電話等による申込みを含む)
書面交付義務…○
クーリング・オフ(期間)…○(8日間)
クーリング・オフ期間経過後の中途解約…※1
連鎖販売取引(マルチ商法)
個人を販売員として勧誘し、さらに次の販売員を勧誘させるというかたちで、販売組織を連鎖的に拡大させながら商品やサービスを販売する
書面交付義務…○
クーリング・オフ(期間)…○(20日間)
クーリング・オフ期間経過後の中途解約…○
特定継続的役務提供(7つの役務)
エステティック、美容医療、語学教室、家庭教師、学習塾、パソコン教室、結婚相手紹介サービス(エステは1か月、その他は2カ月を超える期間5万円を超える金額の契約)
書面交付義務…○
クーリング・オフ(期間)…○(8日間)
クーリング・オフ期間経過後の中途解約…○
業務提供誘引販売取引
仕事を紹介するので収入が得られると勧誘し、仕事に必要だからといって商品やサービスを購入させる
書面交付義務…○
クーリング・オフ(期間)…○(20日間)
クーリング・オフ期間経過後の中途解約…ー
訪問購入
自宅などを訪問して貴金属等物品を購入(買取)する
書面交付義務…○
クーリング・オフ(期間)…○(8日間)
クーリング・オフ期間経過後の中途解約…ー
  • ※1 過量販売による契約解除・・・
    日常生活において通常必要とされる分量(回数、期間)を著しく超える商品等の売買契約の場合、契約から1年間は解除できます。(平成29年12月1日からは、電話勧誘販売も過量販売による契約解除が可能)
  • ※2 通信販売の契約解除等・・・
    通信販売にはクーリング・オフ制度はありませんが、広告に返品に関する事項として、返品の可否、返品の期間等の条件、返品に係る費用負担の有無(これらを返品特約といいます)について表示しなければなりません。これらの表示が無い場合は、商品が届いた日から数えて8日間以内であれば、消費者は事業者に対して、契約申込みの撤回や解除ができ、消費者の送料負担で返品ができます。

【2】消費者契約法

 消費者と事業者の間にある情報の質や量、交渉力の格差を埋めることにより、消費者の利益を擁護するための法律です。労働契約を除く、すべての事業者・消費者間の契約に適用されます。

消費者と事業者の格差是正・消費者利益の擁護

事業者の不適切な勧誘により締結した契約は取り消すことができます

消費者の利益を一方的に害する条項は無効です

■どんな場合に取り消しができるの?

その1 不実告知

販売員の説明が
ウソだった

その2 断定的判断の提供

絶対に儲かるって
聞いたのに!

その3 不利益事実の不告知

都合の悪いことは
わざと教えてくれなかった

その4 不退去、退去妨害・監禁

契約しないと
帰らせてもらえない

その5 過量契約

必要以上に契約させられた。
(例)一人暮らしの高齢者にとって通常必要とする分量を著しく超えていると知りながら、布団を何セットも購入するよう勧誘され、購入してしまった。
《H28年改正により新設》

その1 不実告知
販売員の説明がウソだった
その2 断定的判断の提供
絶対に儲かるって聞いたのに!
その3 不利益事実の告知
都合の悪いことは教えてくれなかった
その4 不退去、退去妨害・監禁
契約しないと帰らせてもらえない
その5 過量契約
必要以上に契約させられた。
(例)一人暮らしの高齢者にとって通常必要とする分量を著しく超えていると知りながら、布団を何セットも購入するよう勧誘され、購入してしまった。
《H28年改正により新設》

取り消すことができる期間は気づいた時から
1年間、契約した時から5年間。
クーリング・オフがだめでもあきらめないで!


あきらめないで!

■無効な契約条項

その1 事業者の損害賠償の責任を免除する条項
(例)当社はいかなる理由があっても一切損害賠償責任を負いません。
その2 消費者契約の解除に伴って不当に高額な損害賠償や違約金を定める条項
(例)契約後にキャンセルする場合には、サービス利用前であってもサービス代金の全額を申し受けます。
その3 消費者の支払いが遅れたことに対して、不当に高額な支払い額の損害賠償や違約金を定める条項(年率14.6%を超える部分)
(例)毎月の家賃(70,000円)は、当月20日までに支払うものとする。前記期限を過ぎた場合には1ヶ月の料金に対し年50%の遅延損害金を支払うものとする。
その4 信義誠実の原則※に反して消費者の利益を一方的に害する条項
(例)掃除機の購入時、注文していない健康食品が、商品の掃除機に同封されて自宅に届けられた場合に、消費者が健康食品を継続購入しない旨の電話をしない限り、健康食品を継続的に購入するとみなす旨の条項。《H28年改正で例示を追加》
※「権利の行使及び義務の履行は、信義に従い誠実に行わなければならない」とする民法の基本原則(第1条第2項)
その5 消費者の解除権を放棄させる条項
(例)販売した商品については、いかなる理由があっても、ご契約後のキャンセル・返品はできません。《H28年改正により新設》
消費者が団結することで権利を守る~消費者団体訴訟制度~

 事業者が不特定多数の消費者に対し、上記の不適切な勧誘を行うなどした場合、内閣総理大臣が認定する「適格消費者団体」は、消費者被害の発生または拡大を防止するため、事業者等に対し差止請求をすることができる制度です。消費者が団結することで、事業者との交渉力の格差を埋めようとする制度ですので、団体の活動を支援することは、消費者の責任(主張し行動する責任、連帯する責任)を果たすことにもなります。

【事例】消費者の声を聞いた東海地区の適格消費者団体からの申し入れにより、大手芸能プロダクションのファンクラブの会員規約を改定。「理由を問わず入会金や年会費を返還できない」といった条項を見直し。