さて少し一般的な議論を進めてみましょう。
変化していく量を表現する巧みな方法として,関数で表現する方法があります。つまり,xが変化するとき,それにともなってyが変化していく関係「y=f(x)」を関数といいますね。この関係を,例えばy=2x+3とかy=x2−2x+3というように関係を式で表現したり,グラフを書くことによって視覚的に理解したりします。
関数をグラフで表現して,このグラフ上をxが変化するとき,「このグラフは瞬間的にどのように変化していると言えばよいか」を議論してみましょう。
考えていく手順は速度の場合と全く同じです。まず,グラフ上のある点A(x,y)において,そこから少し行った点Bをとり,線分ABの傾きをもって,近似的にグラフのAB間の変化であるとします。次にBをAに次第に(無限に)近づけていけば,線分ABの傾きは究極的に(極限として),点Aでのグラフの変化の方向と見なせる訳です。
グラフ上の点xにおける瞬間のグラフの傾きを微分係数といいます。微分係数は,xが変化すれば刻々と変化します。従ってその微分係数もxの関数とみなせます。この関数を導関数といい,もとの関数の名前がfならばその導関数はf’で表します。元の関数からその導関数を求めることを「微分する」といいます。
まとめると
導関数とは,元の関数から派生した関数であり,元の関数のグラフ上の刻々の傾きを表したもの
ということです。
では今のことを実際のグラフで体感してみましょう。
【操作方法】
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どうでしたか。滑らかに曲がっているグラフ上の,瞬間々の変化の方向(傾き)が感じ取れましたか。
さて次に,関数のグラフにおける瞬間の傾きから導関数の描いてみましょう。
関数とその導関数の関係が分かりましたか。
関数が分かれば導関数は導出できるし,導関数が分かれば元の関数が想像できます。 関数とその導関数の関係はちょうど親子関係のようであり,「この親にしてこの子あり」とか「親の顔が見たい」といった状況は,関数の世界でも常に起こります。
さてその「親の顔が見たい」という欲求は,関数においては導関数からその元になっている関数を想像しようという欲求に対応します。
導関数から元の関数を求める操作を「積分する」といいます。 ですから,「微分する」という操作と「積分する」という操作は,ちょうど逆の操作ということになります。
このことを数学の記号で表現すると,
となります。ここで,df(x)/dxとはf(x)を微分した関数(すなわち導関数),∫f(x)dxとは微分するとf(x)となるような関数(すなわち原始関数又は不定積分)という意味の記号です。
この記号の由来は,それぞれ「微分する」「積分する」という操作をイメージ化したものです。
従って,導関数のdf(x)/dxを見ると,グラフ上の点におけるxの瞬間の増分△xとyの瞬間の増分△yの比の極限状態をイメージしているし,原始関数の∫f(x)dxを見ると,f(x)の値とxの瞬間の増分の積の寄せ集めをイメージしています。
さて,「微分する」ことと「積分する」ことは逆の操作でしたので,行ったり来たりできる操作ですが,一つ注意が必要です。それは定数を微分すると0になってしまいますから,微分した後積分すると定数分の情報が失われてしまうということです。言い換えると,
積分するときには,定数分だけの任意性(一通りに決められないという性質)が生じる
ということになります。具体的な関数における微分積分の対照関係をご覧下さい。
では次に,その「積分する」ことの意味をもう少し詳しくみていきましょう。
「積分する」ということは,「微分する」ことの逆の操作であることはすでにみてきましたが,次のように考えることが「積分する」ことをイメージするのに有効です。
まずy=f(x)(ただし,x>0でf(x)>0とします。)を考えます。そして,そのf(x)とx軸との間にできる図形の面積をS(x)とし,S(x)がどのように増加していくかを考えます。
さて,この面積S(x)は,瞬間にどれだけ増加しているのでしょうか。瞬間に増える量を表現する記号は,dS(x)/dxでしたね。よく考えてみてください。
そうです。このように,S(x)が瞬間に増加する量はf(x)なのです。つまり,
dS(x)/dx=f(x)
ということです。従って,f(x)はS(x)の導関数であり,S(x)はf(x)を積分したもの(不定積分,又は原始関数)であることになります。
さて,具体的な関数を例にして,S(x)を求めてみましょう。
関数f(x)=x2(0≦x≦1)の下にできる図形の面積を求めてみます。
上での議論のように,dS/dx=x2ですから,S(x)はx2を積分すればよいことになりますね。
さていままでのことをまとめると,
ということになります。
(だたし,x≧0でf(x)≧0という条件がつきます。)