準備鵜飼(漁)漁の終わり鵜匠の身支度

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・準備

1.鵜の健康観察

 鵜匠は朝6時〜7時頃には起きて、鵜の世話をします。まず、朝、鵜を鳥屋(とや)かごから出して健康観察(けんこうかんさつ)をします。鵜の首をさわったり、羽のはばたき具合を観察したりして、鵜の健康状態や体調をつかみ、鵜飼へつれていく鵜を決めるのです。山下哲司鵜匠宅では15羽(平成16年現在)の鵜が飼われており、そのうち鵜飼につれていくのは10羽〜11羽です。


2.鳥小屋に放たれる鵜たち

 健康観察が終わると鵜は鳥屋に放たれ、水浴びをしたりするなど夕方まで自由に過ごします。鵜かごかごから出された鵜は、まず水浴びをし、そして羽をはばたかせます。このときの羽の水のきれかげんで、鵜匠は鵜の体調(たいちょう)がわかるといいます。そして、鵜たちは夕方漁に出るまでの時間をゆっくりと過ごすのです。


3.鳥屋かごのそうじ

 鵜を出して、からになった鳥屋かごは、長良川の水につけられ、毎日掃除(そうじ)されます。こうして鵜のすむ環境(かんきょう)は、毎日清潔(せいけつ)に保たれているのです。その後、鵜匠は手縄(たなわ)など鵜飼いで使う道具の点検をしたり、首結(くびゆ)いをとりかえたりして鵜飼に備えます。


4.かがり棒(ぼう)の装着(そうちゃく)

 夕方になるといよいよ本格的な鵜飼の準備が始まります。舟の準備は、もっぱら船頭(とも乗り・中乗り)の仕事です。彼らは川岸と鵜匠さんの家を何度か往復して、道具や松割木(まつわりき)(かがり火の燃料となる松の木を割った物)を運びます。また、彼らは鵜飼漁のかなめともいえるかかり棒の装着に神経を使います。鵜舟舳先(へさき)の「さんつぼ」(かがり棒を入れるあな)には、かがり棒といっしょにムクゲの枝葉(えだは)をさします。その樹液(じゅえき)で棒と穴とのまさつを少なくし、かがりに松割木をくべやすくするためです。


5.まわし場(漁のスタート地点)への出発

 午後6時15分ごろ、鵜匠が入念(にゅうねん)にチェックして選んだ鵜が入った鵜かごが鵜舟に乗せられ、船外機が取り付けられます。そして、いよいよ鵜匠の登場です。鵜匠と船頭(とも乗り・中乗り)3人を乗せた鵜舟は、船外機の軽快なエンジン音を響かせながら、川上のまわし場(漁のスタート地点)へと向かいます。


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・鵜飼(漁)

1.漁の始まりを待つ鵜匠

 まわし場に着くと鵜舟を岸に着け、鵜匠は手縄の点検をしたり、鵜を一羽一羽かごから出してはばたたかせたりします。その後、たき火を囲んでしばし歓談のときとなります。こうして、一同出発のときが来るのを待つのです。


2.鵜に首結い(くびゆい)

 午後7時をすぎた頃、鵜舟にかがり火がともされ、鵜がかごから出されます。鵜匠は、首結いをまき、腹がけをしていきます(手縄は、のどにまく方を首結い、羽の下にたすき状にかける方を腹がけといいます)。首結いのかげんは、鵜匠の経験がものをいいます。ゆるめすぎても、強すぎてもだめです。鵜匠は鵜の状態や鮎の大きさにより、しめぐあいをかげんします。


3.くじびき

 いよいよ船出となる直前、各舟のとも乗りたちがくじをひきます。これは、川を下る際の順番を決めるためのものです。これにしたがって、6そうの鵜舟がそろい、たくさんの観客が待つ川下へスタートします。


4.川の下り方

 スタート時の舟のならびはくじで決めましたが、この際、最も魚をとりやすいのは川の中央にいる舟です。続いて川岸近くの舟が有利であり、中間に位置する舟は一番不利になります。このまま漁を続けるととれる魚の量にも差がでます。そこで、6そうの舟は急な瀬をむかえるごとに位置をかえる決まりとなっています。

5.鵜匠と船頭(とも乗りと中乗り)

 舟に乗り込んでいるのは鵜匠・とも乗り・中乗りの3人です。鵜匠はへ先(舟の前の方)で鵜をあやつり、とも乗りはとも(舟の後ろの方)で舟をあやつります。中乗りは両者の間にあって、彼らの補佐(ほさやく)を務(つと)めます。


6.鵜匠の手縄さばき

 鵜飼のメインはなんといっても鵜匠です。左手で10〜12本の手縄のたばをにぎり、右手でその1本1本をさばきます。目は、手縄の先の鵜に集中させています。すばやくて冷静な判断力と機敏(きびん)な運動神経、そしてそれに裏打ちされた的確な手さばきが鵜匠には要求されます。


7.鮎(あゆ)をとる鵜

 かがり火をたよりに鵜は魚を追います。と同時に、かがり火はねむりにつこうとする魚をおどろかせる役割も担っています。鵜はくちばしで魚をショック死させたあと、のみこみます。


8.鵜をたぐりよせる鵜匠

 鵜ののどもとのふくらみに鵜匠の目がとまると手縄がたぐり寄せられます。鵜匠は右手で鵜ののどを押さえ、左手でくちばしを開いてとった魚を吐(はけ)かごにはかせます。舟べりでの一瞬(いっしゅん)のできごとです。それがすむと、鵜は再び川に放たれ、再び漁が開始されます。そして、このような行為が何度もくりかえされながら、舟は下流へと進んでいくのです。


9.総がらみ

 鵜飼いのクライマックスは、総がらみです。総がらみとは、6そうの舟が一体となって浅瀬に魚を追い込む漁の仕方ですが、漁獲を上げることからいえば効果はうすく、藩主(はんしゅ)などに対して敬意を表する意味合いで催されたものだといわれています。今日では、ひととおり狩下った後、たくさんの遊覧船(ゆうらんせん)が停留(ていりゅう)する前で、その夜の鵜飼のフィナーレとして「総がらみ」が演じられています。鵜舟が一列に並びせいぞろいして岸に寄る光景は、とても幻想的(げんそうてき)です。


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・漁の終わり

1.鵜かごにもどる鵜

 漁が終わると鵜たちも水からあげられます。そして、鵜匠によって首結いと腹がけをはずされ、鵜かごにもどります。これは、遊覧船のすぐ前で行われるので、観客が鵜匠や鵜を身近にみるよい機会となります。


2.くちばしの跡がついた鮎

 とれた鮎は、吐かごからもろぶたへうつされます。鮎には鵜のくちばしの跡が残っています。鵜飼でとった魚は瞬間的(しゅんかんてき)にショック死するため鮮度(せんど)が保たれ、他の漁法でとった鮎に比べて高級品として喜ばれます。


3.鵜の夕食

 漁のあと、鵜には1日1度のえさがあたえられます。えさはホッケです。鵜匠は激務(げきむ)にたえた一羽一羽をいつくしむようになで、鵜たちの労をねぎらいます。食事がすむと鵜たちは鳥屋かごに入れられ、ねむりにつきます。


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・鵜匠の身支度(みじたく)

1.漁服(りょうふく)

 素材(そざい)は木綿(もめん)で、夏におこなわれる鵜飼のために暑くないよう裏地(うらじ)のない単衣となっています。色は無地(むじ)で、黒かこん色です。鵜は自分の色と反対の白色には警戒心(けいかいしん)をもつといわれており、それを防ぐために黒やこん色を使っているといわれています。


2.胸当(むねあ)

 火の粉(ひのこ)よけとよごれよけのために着用します。

3.風折烏帽子(かざおりえぼし)

 風折烏帽子(かざおりえぼし)は、鵜匠が頭にまく三尺(さんしゃく)(約90cm)の黒またはこん色にそめられた麻布です。かがり火の火の粉から頭部やまゆ毛などを守るためのものといわれています。

4.腰(こし)みの

 腰みのは、鵜匠を水から守るためのものです。鵜匠自らが、鵜飼いのない冬の間に作っています。

5.足半(あしなか)

 足半は、ちょうどぞうりを半分に切ったような形をしたはきものです。足半はふんばりがきき、かかとをもたないために川の流れにも足をとられないという点で、鵜匠にとって実に都合のいいはきものです。


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